芸術は私達の祖先が残してくれた世界共通の大切な文化。その文化が生まれた国々を訪れて本物を観ることは、五感全てで作品を鑑賞できる最高の方法だろう。
時代を超えて、巨匠の名作を一堂に会したパリのルーブル美術館は、まさに西洋美術史の宝庫であり、19世紀印象派を中心としたコレクションが圧巻のオルセー美術館も、世界中の人々から愛される必見の美術館だ。一方、一人の作家の作品を心ゆくまで堪能するには、やはり個人美術館やアトリエを訪れてみたい。
パリの中心、チュイルリー公園にあるオランジェリー美術館は、クロード・モネ晩年の大作『睡蓮』が、壁一面360度取り囲むように展示されている、モネの美術館として有名だ。都会の喧騒から逃れたオアシスのような空間は、自然光に近いやわらかな明るい光の中、その空気感までも感じることができる。モネの連作のうちでも最大にして最後のものといわれる『睡蓮』。変わりゆく自然、移ろう季節、大気と光線によって水面を彩る限りない世界が、まるで瞑想空間のような『睡蓮の間』を作り上げている。
第一次大戦後、モネはこの大作をフランスに寄贈するのだが、まさに瞑想へと誘う安らぎの場となることを願っていた。「仕事に疲れきった神経は、そこで淀んだ水に佇む風景に癒されるであろう。そしてこの部屋は、ここで過ごす者にとって、花咲く水槽の真ん中で、安らかな瞑想を行うための隠れ家となるであろう」と書き残している(美術館パンフレットより)。
今の気分なら、一番に訪れてみたい場所だ。
パリから凡そ1時間余り、モネが40年以上も暮らしたというノルマンディー地方ジヴェルニーにある家も、ぜひ訪れたいところだ。可愛らしい田舎家の黄色い部屋や浮世絵が飾られた部屋。日本風の太鼓橋のある庭園に花々が咲き誇り、光り輝く睡蓮の池は、私達の疲れた心を和ませてくれることだろう。
A.I.
住所:JARDIN DES TUILERIES 75001
最寄り駅:CONCORDE
開館時間:9:00-18:00
休館日:火曜日
※モネの睡蓮の間の他に、ルノワール、セザンヌ、ピカソ、ゴーギャン、マティス、ユリトロ、スーティン等の作品が常設展示されています。
オランジェリー美術館オフィシャルサイト
https://www.musee-orangerie.fr/fr