パリ郊外には西にブーローニュの森、東にヴァンセンヌの森があります。地下鉄1号線が二つの森を結んでいます。1号線の東行きはヴァンセンヌ城が終点です。駅を降りるとすぐのところにそのお城はあります。
昔のパリは今より遥かに小さく、パリの東はバスティーユでした。ヴァンセンヌはそれより東に位置します。
フランス語でお城はシャトーです。シャトーには敵からの防御のために作られた城砦château fortと、貴族の館としてのお屋敷のchâteauがあります。ロワール川の城やヴェルサイユ宮殿は16世紀以降に建築された王族や貴族の館です。ここヴァンセンヌ城は城砦としての城で12世紀頃から14世紀ごろまでの間に建築されました。城砦は岩山などの高いところに造られることが多いのですが、このヴァンセンヌ城は平地に造られた珍しいものです。昔のルーヴルもこのタイプだったのですが、16世紀に今の姿に建て替えられました。昔の城砦としてのルーヴルの痕跡は今もルーヴルの地下で見られます。
ヴァンセンヌ城の塔(ドンジョン)の高さは52メートルあり、フランス国内では城砦の塔としては最も高いものです。塔の上からはヴァンセンヌの森やパリの街が一望できます。ここはヴェルサイユ宮殿ができるまで、歴代のフランス国王が滞在したところでした。また、同時に牢獄としても使われ、ルイ14世に捕らえられたフーケも囚人としてに幽閉されています。ドンジョンの南には「王の館」と「王妃の館」があります。これは17世紀に建てられたものです。ここにはルイ14世の母アンヌ・ドートリッシュも一時期住んでいました。
敷地内には14世紀に建てられた王室礼拝堂もあります。美しいステンドグラスが有名です。
近隣のヴァンセンヌの森には動物園やパリ花公園もあります。
ところでフランスにはもう一つ「シャトー」と言われるものがあります。全国各地にあり、車窓から目にすることもあります。上は円盤状になっているものもあります。フランス語でchâteau d’eauというと「給水塔」のことを指します。観光名所ではありませんのでご注意を!
MH