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パリの「パサージュ」を歩いてみよう

パサージュとは「通路、抜け道」の意味で、これをパリのパサージュと特定すれば、その大半は1800年代前半に造られた屋根付き商店街(通路)で、その後今の時代に合わせようとしているパサージュもあるのですが、時代遅れで、時間が止まったような、つまりレトロな雰囲気の空間・場所と言えます。

当時鉄とガラスで建物を造ることが流行り始めた時代で、通路の天井はガラスを使ったので雨を除け陽が入り込み、吹き曝しではない建物の間にあるので温かい、と言う商店街(通路)が出来上がったのです。

なお、パリ以外の例として、ミラノの「ガッレリア・ヴィットリオ・エマニュエーレⅡ」があります。これは天井も高く、通路も広いギャラリーですがパサージュの一種です。また、ベルギーのブリュッセルに行くとミラノのそれより天井は低いのですが「ギャルリー・サンチュベール」も同じです。

さて、パリで有名なパサージュと言うと1区のパレ・ロワイヤルの北側(ここには有名レストランル・グラン・ヴェフゥールがある)の出口から出るとすぐ向かいに入り口のあるギャルリー・ヴィヴィエンヌ(名称はパサージュの後ギャルリーが使われるようになったが同質の物)から始まり、途中で途切れ途切れになりますが、更に北へ行くとギャルリー・デ・ヴァリエテ、パサージュ・デ・パノラマ、そしてグラン・ブールヴァールを挟んでパッサージュ・ジョフロワと続いていきます。

なぜこの辺りにこうした商店街が出来て行ったかというと、このあたりには芝居小屋が多く、銀行も集まり、証券取引所もあり賑わいのある界隈だったことからなのです。

ところでこうしたパリ右岸にあるパサージュはあまりに有名で規模も大きく、これについて書かれた本や案内書は多数ありますので、ここではこれ以上取り上げることを止めて、私の好きなパり左岸、カルチェ・ラタンの、メトロ駅オデオンのあたりにあるパサージュについて、その歩き方と楽しみ方を書いてみたいと思います。

メトロ・オデオン駅を地上に出るとサン・ジェルマン大通りがあり、目の前正面に「コンメルス・サンタンドレ小路」の入口があります。中に入ると小さな石畳の通りが奥に続いて、正式名はクール(cour)と表記されているので、「石畳の中庭」といった意味合いがあるようです。通りは一部アーケードになっていて、突然小さな別世界に入り込んだような雰囲気です。名称はパサージュではないけどそれはまさしくパサージュなのです。

この古い小路には、パリで最も古いカフェ、カフェ・ル・プロコープがあることで有名で、この道が裏通りとすればこの店の表通りのアンシエンヌ・コメディ通りにも面していて両側から入ることができます。この店の名前はシチリア人フランチェスコ・プロコピオが1686年に開いたカフェ。創業者のプロコピオはフランスで初めてジェラートを売った人物でもあり、また当時エキゾチックな飲み物であるコーヒーを提供したのです。当初から文学者や哲学者、啓蒙思想家が集い、「文学サロン」としての役割もあり、革命期に政治家が議論を交わす場所ともなりました。その他にもこの小路には歴史の記録に残る店や人物が多数います。

長いパサージュではないのでその雰囲気を味わいながら出口まで来て左に出ると、先ほど表通りと書いたアンシエンヌ・コメディ通りに出るので、セーヌ河方向にむかってドーフィーヌ通りを歩きます。通りに入って100mくらい歩くと左手に小さな柵状の鉄の扉が開いています(小さな入口なので通り過ぎないように)。右側にはクリスチーヌ通りが一方通行で突き当たって出て来るのでわかりますが、小さな小道「パサージュ・ドーフィーヌ」が見つかります。

パサージュ・ドーフィーヌは石畳の短いパサージュで、ドーフィーヌ通りとマザリーヌ通りを結んでいます。パサージュといっても、想像するようなアーケード付きの豪華なパサージュではなく、ただの抜け道で、それでもこの通りに入ると急に別世界が広がります。緑がありアパルトマンに囲まれて、今までの喧騒が嘘のように無くなり、落ち着いた時間を過ごすことができるので、この辺りを歩くなら必ず立ち寄ってみるとよいパリ散策におすすめのパサージュです。

なぜこのような場所をお勧めするかと言うと、はるか昔、わずかな期間ですが私はこのパサージュに面している学校でフランス語を学んでいたことがあるのです。だからこのパッサージュの静けさを知っているのです。パサージュには一つだけカフェがあるので一休みするのも良いかもしれません。

通りに出るとマザリーヌ通りがあります。右に向かうとセーヌ河方向になりますが、ここで左に出て少し歩くと(セーヌを背に)ビュッチ通りに出ます。細い道ですがまた華やかなお店や人通りに入り込みます。この道を右方向、サンジェルマン・デ・プレ教会に向かえばカフェ・フロールなどの有名カフェが並んでいます。

更にこの辺りからもう一度セーヌ河方向に向かえばアートや骨董を扱うギャラリーが集まり、さらにはインテリアショップや世界に冠たるモードのブランドショップなどが立ち並んでいます。それもそのはず「パリ国立高等美術学校」通称ボザールがボナパルト通りにあるからなのです。そしてもう少し足を延ばせばオルセー美術館。

パリ散歩コースとしてはもってこいではありませんか。

もう一度パサージュの話に戻って最後にここで一つ書き残しておきたいのは、パリ左岸にも屋根のついたパサージュは確かにあったのですが、時代の中で消えてしまいました。一つはクリュニー中世美術館の南、ソルボンヌ通り18番地にありました。入り口の格子扉の上にパッサージュ・ドゥ・ラ・ソルボンヌと書かれているのでわかります。しかし今は大学の事務所に吸収されてしまってパサージュの面影はこの入り口の名前だけなのです。

更にもう一つ、先ほどのボザールの近くに今はその痕跡もなくなって普通の通りになってしまった、パサージュ・デュ・ポン=ヌフがありました。20世紀前後のパリの建築物、室内家具など失われる古きパリのイメージを撮影した写真家ジャン=ウジェーヌ・アジェが人通りも絶えてしまったこのパサージュを1910年に撮った写真が残っています。

もし同時にパリ右岸のパサージュとパリ左岸のパサージュを歩くことができたら、その規模、雰囲気の違いに気づきます。それはそもそもセーヌを挟んで右岸の街と左岸の街の雰囲気の違いです。

パサージュはやはり時代遅れで、時間が止まったような、つまりレトロな雰囲気の場所。パリ19世紀中ごろから20世紀初頭へタイムスリップするような場所ですが、パリの街歩きの一つの特別なパターンを提供してくれていると思うのです。

GK

 

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