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ジャンピ と キシジョ 「交通違反」

「フランスでは18歳から自動車免許が取れるよな」「そッ、でもよ16歳から仮免がもらえてよ、隣に免許持っているのが座ってりゃ、運転できるんだ」30年もパリに暮らしているキシジョはフランスでの運転暦は長い。

「お前フランスに来ていつごろから車に乗り始めたんだい?」 あいかわらずテンションの低いジャンピは、興味なさそうに相槌をうっている。 「24歳のころかな。 このころから本格的にパリで仕事しようと思ったんだ。 で、会社がクルマ一台くれてよ。 それにクルマがなけりゃ仕事できないようなことやってたからな」 「でよ、フランスは変わってるよな。 免許証取ると、一生更新なしだもんな。 二十歳のころの写真がよ、七十、八十になっても同じ免許証もってんだもんな。 この間世話になった爺さんのルメールさん、免許証見せてくれてな、19歳のときの写真が貼ってあるんだよ。 もうセピア色だぜ」 「俺のを見ろよ、若いころは髪の毛があったんだ。 見直したろ」 ジャンピの目がいかにも懐かしそうだ。

「免許証は A B C に分かれていて、Aはバイク・自動二輪で、Bが自動車、Cは大型のバスやトラックだと思う」 「メガネを掛けたりとか何か身体的な事情があると5年更新だよな」 「あ、タクシーもそうさ。 5年だよ」

「交通違反の罰則は良く知らないが、 Tirer Point チレ ポワン と言って、減点制さ」 「これは日本と同じだよな。で、俺はよ、レッカー移動の車が置いてあるところ、パリ中全部行ったようなもんだよ。クルマ取りにさ。 あれ Fourrier って言うんだが、レ・アールやアヴェニュ・フォッシュやジョルジュ・ポンピトゥー センターのとこや、サンラザールのや、果てはポルト・ド・ラ・ヴィレットのあのパリ最果ての駐車場まで取りにいったゼ」

「交通違反常習犯かよ。 パリのフランス人って、そんなとこめったに知らないぜ」 「そ、常習犯。 で、一ヶ月取りにいかないと、中古車屋に売られちまうんだよ」 「でよ、俺などどれくらい罰金取られたか語るも涙さ。 一番ひどいのは、スピード違反、信号無視、酔っ払い、まっ、酔っ払って信号無視して警察に追われてスピード違反、よくある話だよな」 「おまえ、そんなのよくある話じゃないぜぇ」 「でそのとき、車放っておいて逃げたんだよ。
その車おれの友達のでな、警察がその車のナンバーから持ち主割り出して、そいつのとこへ来たんだよ。 であいつ日本に帰ったよ、なんて言ってごまかしたそうだ、そしたらその警察、アーッ セドマージュ とか何とか言って帰って行ったよ」 「なんだよそれ、よくまそんなで済んだもんだよな」 ジャンピはさすが昔銀行員だったせいか、まじめが取り得、少し抜けたまじめだが、呆れて目を白黒させていた。 いや、白青か。

「簡易裁判所なんかよく行ったよ。 本当によくな」 「一度なんか、オルリーからパリへ戻るとき、車のブレーキが効かなくなって、前の車は信号で止まるは、急いで右にハンドル切って、右の土手に乗り上げてさ、本当に怖かったよ。 あの時前の車にぶつけていれば、きっと死人がでただろうな。 俺を含めてな。 九死に一生って言うけど、あれがそれだな」

「で、あんまり違反ばかりしているともう車も登録できないし、保険にも掛けられない。 で、俺の息子の名前で登録したよ。 その時もさ、こういうことだけに長けている弁護士がいてな、悪徳弁護士だけど。 高い弁護士料払ってやってもらったが、簡易裁判所で、判事があなたは事故を起こしたことがあるか、というので、ついハイ、なんて答えちゃって、それで全部パーだよ。すべて水の泡」

「そう言えば俺の得意なことを一つ教えるよ。エトワールのあのロータリー。クルマが一杯でクルクル回って一度入ると出られなくなってしまうよな。よく女の子が運転して出られなくて半ベソかいているのを見かけるけど、あそこを出たり入ったりするのは俺の得意技さ。出ようとする先にハンドルぐっと切って横のクルマに被せればいいんだ。まっ、口では簡単に言うけど普通はむつかしいな。きっとジャンピもあそこは苦手だろうから、一緒にクルマに乗る時は俺があそこは運転してやるからな」

「でもよ、パリなんて小さな町で、あれだけ便利な交通事情でもよ、クルマ乗り始めるともう止まらない。 モッピケからコンメルスへ行くくらいでもクルマ乗っちゃうから。メトロ2区だぜ、たったの2区、それでも乗ろうとするから、これは中毒だよな」

GK

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